働き方

終身雇用はなぜ崩壊したのか?年功序列に基づく終身雇用のメリット、デメリットと、日本における今後のあるべき働き方について

終身雇用がなぜ崩壊したのか、その原因と影響を詳しく解説します。戦後日本経済を支えた終身雇用制度が直面した問題、そしてその崩壊が我々の労働環境にどのような変化をもたらしたのか。また、終身雇用制度の後継となる、新たな労働スタイルとは何か?これから働く我々に必要な視点を提供します。この記事を通して、過去から現在、そして未来へと続く日本の働き方の軌跡を理解することができます。

1. 終身雇用制度の誕生と機能

終身雇用制度とは、私たち日本人にとって馴染み深い雇用形態の一つです。しかし、どのような起源から生まれ、どのような機能を果たしてきたのでしょうか。ここでは、終身雇用制度の誕生とその役割について詳しく解説します。

1.1 終身雇用制度の起源

終身雇用制度の起源は、戦後の日本の急速な経済成長が始まるころにさかのぼります。具体的には、1950年代後半から60年代前半にかけての高度経済成長期に登場しました。この時期、国内の需要が急増し、労働力が不足する中、企業は生産力を維持するために人的資源を確保し続ける必要がありました。

そこで、企業は若いうちから優れた人材を採用し、一生働き続けることを前提に教育と訓練を施す方式を取りました。これが終身雇用制度の出発点です。この制度によって、労働力の安定供給や社会的な雇用安定が実現しました。

1.2 終身雇用制度がもたらした利点

終身雇用制度は、企業と労働者双方に利益をもたらしました。企業側にとっては、終身雇用により長期間にわたって労働者を確保でき、その結果、社員のスキルや知識、経験を最大限に活用することが可能となりました。

また、労働者側にとってもメリットは大きく、終身雇用制度により長期的な雇用と収入安定が保証される一方、企業内でのキャリアアップの機会が提供されてきました。

1.3 終身雇用制度の問題点

一方で、終身雇用制度にはいくつかの問題点も存在しました。まず、企業側の視点から見ると、経済環境の変化や業績の悪化により人員削減が必要となった際、比較的高齢で高給取りである中長期勤続者を削減することが難しいという点が挙げられます。これにより、企業の財務負担が増大する危険性がありました。

また、労働者側から見ても問題がありました。終身雇用制度は年功序列型の賃金システムや昇進システムに基づいていますが、これが若い世代の昇進や賃上げを阻害する要因ともなりました。

2. 終身雇用制度の崩壊の経緯

終身雇用制度がとどのつまり崩壊した背景には、経済情勢の変化と労働者側の価値観の進化があります。具体的には、バブル崩壊後の雇用情勢の厳しさ、企業負担の増大、ワークライフバランスやキャリアアップへの関心の高まりといった要因が挙げられます。

2.1 経済状況の変化と終身雇用制度

経済的な観点から終身雇用制度の崩壊を考察するためには、一番大きな要素であるバブル崩壊後の雇用情勢と、それに伴う企業負担の増大について見ていきましょう。

2.1.1 バブル崩壊と失業率の上昇

バブル崩壊後の90年代から、日本の経済は低下の一途を辿りました。必然的に多くの企業が経営難に陥り、リストラや給与カットなどを余儀なくされました。これによって失業率は激増し、一部では終身雇用の破綻が報告されました。この時期から、終身雇用のリスクがあらゆる社会階層に広く認知され、表面化してきました。

2.1.2 企業の負担増大と終身雇用の見直し

一方で、人件費の負担が増大した経済情勢も、終身雇用制度の崩壊に一役買いました。新規卒業者を確保しつつも、一方で長年働いてきた中高年の社員を削減せざるを得ない状況が生まれました。これは賃金が年次昇進型で給与が増え続ける終身雇用制度が、企業にとって重荷となった結果です。

2.2 労働者側の意識の変化

そして、これらの経済的な変化と並行して、労働者自身の意識も変化し、ワークライフバランスの重視やキャリアアップへの意識改革が始まりました。

2.2.1 ワークライフバランスの重視

これまでの働き方としての「働きづめ」から、自分の人生を豊かに過ごすためのバランスを一部の労働者が重視し始めました。それは自分らしい生き方や働き方を模索する一環であり、これが企業にも一定の影響を及ぼしていきました。

2.2.2 キャリアアップへの意識変化

一方で、「生涯同じ企業に勤務し続ける」という終身雇用制度の枠組みから、自由なキャリア形成を追求する労働者が増えました。中でもIT業界など新興業種ではスキルベースの働き方が必要とされ、待遇や働き方が変わってきたことから、労働者の流動性は高まり、職務経験を重視する傾向が強まりました。

3. 終身雇用制度の崩壊が社会に与えた影響

終身雇用制度の崩壊がもたらした影響は深刻で、雇用不安の増大、不安定雇用の増加、若者の職業観の変化などが挙げられます。

3.1 雇用不安の増大

一般的に、終身雇用制度は一度採用されれば、基本的に定年まで雇用され続けることを意味するため、労働者にとっては安定した就労環境を保証するものでした。しかし、終身雇用制度が崩壊へと向かうにつれて、その安定性が揺らぎ始めました。同時に雇用の不安が高まり、それは特に中年層に深刻な影響を与えています。これまで終身雇用の安定性に頼っていた彼らは、裁量労働や転職といった新たな働き方に対して経験も知識もなく、不安を覚えています。

3.2 不安定雇用の増加

雇用不安の高まりと並んで、不安定雇用の増加も終身雇用制度の崩壊による大きな影響の一つです。派遣社員や契約社員、パート・アルバイトなどの非正規雇用が増え、その結果、雇用形態の多様化が進んでいます。しかし、終身雇用制度に比べ、これらの雇用形態は給与が低い、福利厚生が少ない、雇用保険の対象とならないなど、労働者にとっては不安定な要素が多いです。

3.3 若者の職業観の変化

不安定雇用の増加とともに、若者の職業観も変化しています。過去には終身雇用の会社を選ぶことを良しとする風潮がありましたが、現在の若者はそれよりも自身のライフスタイルに合った働き方を重視する傾向にあります。

4. 日本における今後のあるべき働き方

終身雇用制度の崩壊により、労働力市場は大きな転換期を迎えています。エコノミストや社会学者からさまざまな新しい働き方が提案されていますが、その中でも注目すべき2つの傾向があります。

4.1 多様な雇用形態の受け入れ

終身雇用への依存からの脱却として、多様な雇用形態の受け入れが求められています。以下では、その一例としてフレキシブルワークの導入とフリーランスや起業への道を探ります。

4.1.1 フレキシブルワークの導入

フレキシブルワークは、従来の働き方とは異なり、働く場所や時間、方法を柔軟に変えられる働き方です。「働き方改革」の一環として、政府もこのフレキシブルワークを積極的に推進しています。例えば、リモートワークやテレワーク、コワーキングスペースの利用です。企業も多様な価値観を持つ人材を確保し、働きやすい環境を提供するために導入を進めています。

4.1.2 フリーランスや起業への道

終身雇用の崩壊とともに、自身のスキルや能力を活かして独立するフリーランスや起業家も増えてきました。特に若者の中には、リスクを取ってでも自由な働き方を選ぶ人が増えています。政府もこれを支える政策を打ち出しており、創業支援制度やスタートアップの育成などが進められています。

4.2 スキルベースの雇用

終身雇用が保証されていた時代は、一度入った企業で一生を終えることが一般的でしたが、現在はそのような保証はありません。そのため、個々のスキルがより重視される傾向にあります。教育や訓練を通じて自己のスキルを高め、自分自身の価値を上げることが重要です。個々の能力とスキルに基づいた雇用が主流となりつつあり、このスキルベースの雇用こそが、終身雇用制度の崩壊後の日本の新たな働き方となるでしょう。

5. まとめ

終身雇用制度の崩壊は経済状況や働く側の意識変化などが影響したと言えます。現在、多様な働き方が求められ、スキルベースの雇用が重視される流れが続いています。社会全体で多様な雇用形態を受け入れる必要があるというのが結論です。

引用先

この記事は参考になる情報として認めていただき、以下に引用いただきました。

「正社員の求人」というだけでは人材が集まらない(ジョブズゴー)

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