ビジネス一般

成果が出るカスタマージャーニーマップの作り方|5ステップで徹底解説

最終更新日:

顧客の行動や思考を時系列で可視化する「カスタマージャーニーマップ」は、マーケティング施策の精度を高めるために不可欠なフレームワークです。しかし「具体的な作り方が分からない」と悩む担当者も少なくありません。本記事では、カスタマージャーニーマップの定義やメリットから、成果が出る作成手順の5ステップ、役立つツールまでを網羅的に解説します。顧客視点を深く理解し、最適な顧客体験を実現するためのノウハウを習得しましょう。

1. カスタマージャーニーマップとは何か

現代のマーケティングにおいて、顧客の購買行動は複雑化し、企業が顧客一人ひとりの動きを正確に把握することはますます困難になっています。そのような状況下で、顧客理解を深めるための強力なフレームワークとして注目されているのが「カスタマージャーニーマップ」です。

この章では、カスタマージャーニーマップの基本的な定義や構成要素、そして切っても切り離せない関係にある「ペルソナ」との違いについて解説します。

1.1 カスタマージャーニーの意味と定義

カスタマージャーニー(Customer Journey)とは、直訳すると「顧客の旅」を意味します。顧客が商品やサービスを認知し、関心を持ち、購入や契約に至り、さらには利用継続や他者への推奨を行うまでの一連のプロセスを「旅」に見立てた概念です。

そして、このプロセスにおける顧客の「行動」「思考」「感情」の変化を、時系列に沿って一枚の図や表に可視化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。

単に顧客がどのような経路で購入に至ったかという事実を並べるだけではありません。その時々の顧客がどのような接点(タッチポイント)で企業と関わり、何を考え、どのような感情を抱いているのかを詳細に描き出すことで、顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)全体を俯瞰して捉えることができるのが最大の特徴です。

一般的に、カスタマージャーニーマップには以下の要素が含まれます。

構成要素内容と役割
フェーズ(ステージ)認知、興味・関心、比較検討、購入、利用など、時系列で区切った段階。
タッチポイント(接点)SNS、Webサイト、店舗、広告、メールマガジンなど、顧客と企業が接する場所。
行動(アクション)「検索する」「口コミを見る」「来店する」など、顧客が実際に行う具体的な行動。
思考・感情「これなら悩みが解決できそうだ(期待)」「手続きが面倒だ(不満)」といった心理状態の変化。
課題・施策各フェーズにおける顧客の不満や障壁(ギャップ)と、それを解決するための具体的なアクション。

このように情報を整理することで、企業目線では気づきにくい「顧客がつまずいているポイント」や「もっと満足度を高められるタイミング」を発見することが可能になります。

1.2 ペルソナ設定との違いと関係性

カスタマージャーニーマップを作成する際、必ずセットで語られるのが「ペルソナ(Persona)」です。これらは混同されがちですが、役割と視点に明確な違いがあります。

ペルソナとは、実在するデータに基づき作成された「架空の典型的顧客像」のことです。年齢、性別、職業といったデモグラフィック情報だけでなく、価値観、ライフスタイル、抱えている悩みなどのサイコグラフィック情報まで詳細に設定します。

両者の関係性を簡潔に表現すると、「ペルソナ」が物語の主人公であるのに対し、「カスタマージャーニーマップ」はその主人公が体験するストーリーそのものと言えます。

項目ペルソナカスタマージャーニーマップ
焦点「誰が」顧客なのか(人物像)顧客が「いつ・どこで・何を」するのか(体験プロセス)
視点静的な属性や価値観動的な行動や感情の変化
作成の目的ターゲット像を明確にし、チーム内の認識を統一する顧客体験の流れを可視化し、最適なタイミングで施策を打つ

重要なのは、明確なペルソナ設定がなければ、精度の高いカスタマージャーニーマップは描けないという点です。「誰の旅なのか」が曖昧なままマップを作成しても、行動や感情の推測がブレてしまい、実効性のない施策になってしまう恐れがあります。

したがって、マーケティング施策を立案する際は、まずペルソナを策定して「顧客像」を固め、そのペルソナがどのように動くかをシミュレーションするためにカスタマージャーニーマップを作成する、という手順を踏むことが成功への近道です。

2. マーケティングでカスタマージャーニーマップを作成するメリット

マーケティング活動において、顧客の行動や感情のプロセスを可視化するカスタマージャーニーマップは、単なる「図解資料」以上の重要な役割を果たします。複雑化する消費者の購買行動を紐解き、成果に直結する施策を打つための羅針盤となるからです。

ここでは、カスタマージャーニーマップを作成することで得られる具体的なメリットを、組織、顧客体験、そして施策実行の3つの観点から詳しく解説します。

2.1 顧客理解の深化とチーム内の認識統一

最大のメリットは、社内やチーム全体で「顧客に対する認識」を統一できる点にあります。マーケティング、営業、カスタマーサクセス、製品開発など、部署が異なれば顧客の見え方や重視するポイントも異なります。その結果、部署ごとに施策がバラバラになり、一貫性のないメッセージを顧客に届けてしまうリスクが生じます。

カスタマージャーニーマップを作成する過程で、顧客がどのような課題を持ち、どのような感情で自社商品に関心を持つのかを深く掘り下げます。これにより、「誰に」「何を」「どのように」届けるべきかという共通言語をチーム内に作り出すことが可能です。

関係者全員が同じマップを共有することで、主観や思い込みによる議論を減らし、客観的な顧客データに基づいた建設的な意思決定ができるようになります。組織のサイロ化を防ぎ、全社一丸となって顧客に向き合う体制が整うのです。

2.2 顧客体験の向上と課題の発見

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを認知してから購入、さらには利用後のファン化に至るまでの「顧客体験(CX)」を時系列で俯瞰することを可能にします。これにより、企業側が良かれと思って実施していた施策と、実際の顧客の感情との間に生じている「ギャップ」を発見しやすくなります。

例えば、Webサイトへのアクセスは多いのに購入に至らない場合、マップ上でそのフェーズの顧客心理を分析することで、「比較検討に必要な情報が不足している」「申し込みフォームが複雑でストレスを感じている」といった具体的なボトルネック(課題)を特定できます。

顧客視点で自社のサービスを見つめ直すことで、どの接点で顧客体験が損なわれているのかが明確になります。以下に、マップ作成によって可視化される課題と改善の視点を整理しました。

視点マップ作成前の状態(課題)マップ作成後の状態(メリット)
全体像の把握点での施策になりがちで、全体の一貫性がない線でのストーリーとして顧客体験を設計できる
課題の特定どこで離脱しているのか原因が曖昧ボトルネックとなる接点や心理的障壁が明確になる
顧客満足度企業都合の売り込みで顧客が疲弊する顧客のタイミングに合わせた心地よい体験を提供できる

2.3 タッチポイントごとの最適な施策立案

顧客は購入に至るまでに、SNS、検索エンジン、Webサイト、メール、実店舗、カスタマーサポートなど、多様なタッチポイント(顧客接点)を行き来します。カスタマージャーニーマップを作成することで、それぞれのタッチポイントで顧客が求めている情報や体験が何であるかを明確に定義できます。

「認知」のフェーズでは興味を惹くコンテンツを、「比較検討」のフェーズでは安心感を与える事例紹介を、といったように、顧客の心理状態に合わせて、最適なタイミングで最適なチャネルを通じたアプローチが可能になります。

また、施策の優先順位付けも容易になります。マップ上で「最も離脱が多い箇所」や「競合に流れているポイント」が可視化されるため、限られた予算やリソースを効果の高い施策に集中投下することができます。無駄な広告費を削減し、コンバージョン率(CVR)や顧客生涯価値(LTV)の向上に直結する戦略的なマーケティング活動が実現します。

3. 成果が出るカスタマージャーニーマップの作り方5ステップ

成果が出るカスタマージャーニーマップの作り方 5ステップ 1 ターゲットとなるペルソナを明確に設定する 実在する人物のように、属性や心理的特徴まで詳細に設定する。 2 顧客のゴールと行動範囲を決める 期間(スコープ)と、どの状態を目指すか(ゴール)を定義する。 3 フレームワークを選定し横軸と縦軸を設定する 横軸にフェーズ、縦軸に行動・思考・感情などの要素を配置する。 4 顧客の行動と思考や感情をマッピングする 顧客視点に立ち、事実に基づいた情報を具体的に記入する。 5 マップをもとに具体的な施策を洗い出す 課題を見つけ出し、解決するためのアクションプランを立案する。

カスタマージャーニーマップの作成は、ただ闇雲に情報を並べるだけでは意味がありません。顧客の心理変容と行動を時系列で正しく捉え、マーケティング成果に結びつけるためには、正しい手順を踏む必要があります。ここでは、誰でも実践できる標準的な5つのステップに分けて解説します。

3.1 ステップ1:ターゲットとなるペルソナを明確に設定する

カスタマージャーニーマップを作成する上で最も重要な土台となるのが「ペルソナ」の設定です。ペルソナとは、自社の商品やサービスを利用する典型的な顧客像のことを指します。

「30代男性、会社員」といった大まかな属性(デモグラフィック)だけでなく、価値観、ライフスタイル、抱えている悩み、情報収集の癖といった心理的特徴(サイコグラフィック)まで詳細に落とし込む必要があります。たった一人の実在する人物かのように具体的に設定することで、顧客の行動や感情をリアルに想像できるようになります。

もし、ターゲット層が複数存在する場合は、主要なペルソナを1つに絞るか、ペルソナごとに別のマップを作成することをおすすめします。複数のターゲットを1つのマップに混在させると、行動パターンが複雑になりすぎ、施策の焦点がぼやけてしまうからです。

3.2 ステップ2:顧客のゴールと行動範囲を決める

ペルソナが決まったら、今回のマップで扱う「期間(スコープ)」と「ゴール」を設定します。顧客がどの時点からスタートし、どのような状態になることをゴールとするのかを定義する工程です。

例えば、以下のように目的によって範囲は異なります。

  • 認知から購入まで:新規顧客の獲得を目的とする場合
  • 購入から継続利用まで:リピート率向上やLTV(顧客生涯価値)最大化を目的とする場合
  • 認知からファン化まで:長期的なブランディングを目的とする場合

スタートとゴールが曖昧なまま作成を始めると、議論が発散しやすくなります。「どの段階の顧客体験を改善したいのか」という目的意識をチームで共有してから次のステップへ進みましょう。

3.3 ステップ3:フレームワークを選定し横軸と縦軸を設定する

次に、マップの骨組みとなるフレームワーク(枠組み)を作成します。一般的には、横軸に「時間の流れ(フェーズ)」を、縦軸に「分析する要素」を配置します。

BtoB(法人向け)かBtoC(一般消費者向け)か、あるいは商材の特性によって最適な項目は変わりますが、基本となる構成要素は以下の通りです。

軸の種類設定項目の例内容の説明
横軸(フェーズ)認知・興味・比較検討・購入・利用・推奨顧客が商品を知ってから購入し、利用後に他者へ勧めるまでの時系列の段階。
縦軸(要素)タッチポイント(接点)Webサイト、SNS、店舗、広告、口コミ、メルマガなど顧客と企業の接点。
顧客の行動「検索する」「店員に聞く」「資料をダウンロードする」などの具体的なアクション。
思考「これなら自分に合いそうだ」「価格が高いな」といった顧客の頭の中の考え。
感情期待、不安、満足、失望などの感情の起伏。
課題・施策そのフェーズにおける顧客の不満や、企業が取るべき解決策。

この段階では、まだ中身を埋める必要はありません。自社のビジネスモデルに合わせて必要な項目を過不足なく用意することがポイントです。

3.4 ステップ4:顧客の行動と思考や感情をマッピングする

枠組みができたら、実際に情報を埋めていく「マッピング」の作業に入ります。ここでのポイントは、企業側の都合や「こう動いてほしい」という願望を書くのではなく、徹底して顧客視点に立ち、事実に基づいた情報を記入することです。

具体的には以下の順序で埋めていくとスムーズです。

  1. 行動の洗い出し:各フェーズでペルソナがどのような行動をとるか書き出す。
  2. タッチポイントの整理:その行動はどこ(スマホ、店舗、PCなど)で行われるか特定する。
  3. 思考と感情の想像:その行動をとるとき、ペルソナは何を考え、どのような感情(ポジティブ・ネガティブ)抱いているかを記述する。

可能であれば、実際の顧客へのインタビュー結果やアンケートデータ、アクセス解析のログなどを活用してください。事実に基づかない想像だけのマップは、精度の低い施策につながるリスクがあります。

3.5 ステップ5:マップをもとに具体的な施策を洗い出す

マッピングが完了したら、全体を俯瞰して課題を見つけ出し、解決策を立案します。ここがカスタマージャーニーマップ作成のゴールであり、最も重要なパートです。

特に注目すべきは、顧客の感情がネガティブになっているポイントや、行動が停滞している箇所です。そこには「情報がわかりにくい」「手続きが面倒」といった顧客体験(UX)を阻害する要因が潜んでいます。

課題が見つかったら、それを解消するための具体的なアクションプランに落とし込みます。

  • コンテンツ不足の場合:比較検討層向けの事例記事を作成する
  • 離脱が多い場合:エントリーフォームの入力項目を減らす
  • リピートが少ない場合:購入後のフォローメールを自動化する

最後に、洗い出した施策に優先順位をつけ、担当者と期限を決めましょう。マップを作って満足するのではなく、実際のマーケティング活動に反映させることで初めて成果が生まれます。

4. カスタマージャーニーマップの作成で失敗しないためのポイント

カスタマージャーニーマップは、正しく作成・運用できれば強力なマーケティングツールとなりますが、作り方を誤ると単なる「理想の顧客像を描いた絵」になってしまい、実際の施策に結びつかないことがあります。多くの企業が陥りやすい失敗パターンを理解し、実効性のあるマップを作成するための重要なポイントを押さえておきましょう。

4.1 企業目線ではなく顧客視点を徹底する

カスタマージャーニーマップ作成において最も陥りやすい失敗は、企業の「こう動いてほしい」「こう考えているはずだ」という願望や思い込みが反映されてしまうことです。これを防ぐためには、徹底した顧客視点を持つことが不可欠です。

4.1.1 願望ではなく事実(ファクト)を集める

社内の会議室だけで想像して作ったマップは、往々にして「売り手都合の理想図」になりがちです。精度の高いマップを作るためには、実際の顧客の声や行動データに基づいた「事実(ファクト)」を収集する必要があります。

具体的には、既存顧客へのデプスインタビューやアンケート調査、Webサイトのアクセス解析データ、カスタマーサポートへの問い合わせ履歴などを活用します。社内の推測や希望的観測を排除し、定性・定量の両面から集めた客観的なデータに基づいて顧客の行動をマッピングすることが、成果への第一歩です。

4.1.2 ネガティブな感情や行動も正確に描く

企業としては、自社の商品やサービスに対して顧客が常に好意的であってほしいと願うものですが、実際のジャーニーには「迷い」「不安」「不満」「離脱」といったネガティブな要素が含まれます。

こうした不都合な真実を無視してきれいなマップを作っても、課題の発見にはつながりません。顧客がどこでつまずき、どのようなネガティブな感情を抱いたかを可視化することで初めて、ボトルネックを解消し顧客体験(UX)を向上させるための具体的な改善策が見えてくるのです。

比較項目失敗しやすいマップ(企業目線)成果が出るマップ(顧客視点)
情報の根拠担当者の想像や願望インタビューや行動ログなどの事実
描かれる感情ポジティブな反応ばかり不安や不満などネガティブな感情も含む
目的理想のルートを示すこと顧客の現実を理解し課題を見つけること

4.2 最初から完璧を目指さず仮説検証を繰り返す

もう一つの大きな失敗要因は、完璧なマップを作ろうとして時間をかけすぎてしまうこと、そして一度作ったら完成だと思い込んでしまうことです。

4.2.1 作成自体をゴールにせず運用を前提にする

カスタマージャーニーマップは、作ること自体が目的ではありません。作成したマップをもとに施策を実行し、効果検証を行うための「手段」です。細部のデザインや完璧な網羅性にこだわりすぎて数ヶ月も時間を費やすよりも、ある程度の精度(例えば60〜70%程度)で完成させ、早めに施策の実行フェーズに移ることが重要です。

まずは「プロトタイプ(試作版)」として運用を開始し、実際の顧客の反応を見ながら修正を加えていくアジャイルな進め方が推奨されます。

4.2.2 定期的なアップデートで精度を高める

市場環境や顧客の行動様式は常に変化しています。また、施策を実行すれば顧客の反応も変わります。したがって、半年や1年前に作成したマップが現在も有効であるとは限りません。

マップをオフィスの壁に貼ったまま放置するのではなく、定期的にチームで見直しを行いましょう。カスタマージャーニーマップは一度作って終わりではなく、PDCAサイクルを回しながら常に最新の状態に更新し続ける「生き物」であると認識することが、長期的な成果につながります。

5. 作成に役立つおすすめのツールとテンプレート

カスタマージャーニーマップ作成ツールの選び方 目的別おすすめツール3選 Miro チーム全員で アイデア出し ブレインストーミング Lucidchart 複雑な条件分岐や 論理構造の整理 ロジカルな設計 Canva デザイン性が高く そのまま資料に 美しいプレゼン資料 ツール選定で失敗しない3つの視点 共同編集 チームで同時作業? 学習コスト 直感的に使える? 出力形式 PDF/画像化は容易?

カスタマージャーニーマップの作成は、付箋と模造紙を使ったアナログな方法でも可能ですが、チームでの共有や修正のしやすさを考慮すると、デジタルツールの活用が非常に効果的です。特にリモートワークが普及した現在では、オンライン上でリアルタイムに共同編集できるツールを導入することで、作業効率が格段に向上します。ここでは、初心者でも扱いやすく機能が充実しているおすすめのツールと、テンプレート活用のポイントを紹介します。

5.1 効率化と共有を加速させるおすすめツール3選

カスタマージャーニーマップ作成に特化したツールや、汎用性が高く使いやすいオンラインホワイトボードツールの中から、特に評価の高い3つのサービスを厳選しました。

5.1.1 1. Miro(ミロ)

Miroは、世界中で利用されているオンラインホワイトボードプラットフォームです。無限に広がるキャンバス上に、付箋を貼る感覚で直感的に情報を整理できます。カスタマージャーニーマップ専用のテンプレートが豊富に用意されており、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、誰でもすぐに見栄えの良いマップを作成できる点が大きな魅力です。チームメンバーが同時にアクセスし、カーソルを表示させながら議論できるため、ワークショップ形式での作成にも最適です。

5.1.2 2. Lucidchart(ルシッドチャート)

Lucidchartは、作図やフローチャート作成に強みを持つビジュアルコラボレーションツールです。論理的な構造整理が得意で、複雑な顧客の行動フローを整理するのに適しています。Salesforceなどの外部データと連携させる機能もあり、よりデータドリブンなマップ作成を目指す企業におすすめです。

5.1.3 3. Canva(キャンバ)

デザインツールとして有名なCanvaですが、実はカスタマージャーニーマップのテンプレートも多数取り揃えています。デザイン性が非常に高く、プレゼンテーションや社内資料としてそのまま使えるクオリティのマップが短時間で完成します。直感的な操作性は随一で、デザインスキルがない担当者でも美しい資料を作成可能です。

各ツールの特徴を以下の表に整理しましたので、選定の参考にしてください。

ツール名主な特徴おすすめの利用シーン日本語対応
Miro自由度が高く、付箋機能が強力チーム全員でブレインストーミングしながら作成する場合あり
Lucidchart作図機能が充実、データ連携が可能複雑な分岐条件を含む詳細なフローを設計する場合あり
Canvaデザイン性が高くテンプレートが豊富完成したマップを経営層や他部署へ美しく提示する場合あり

5.2 PowerPointやExcelでのテンプレート活用

専用ツールの導入が難しい場合や、セキュリティの観点から新しいソフトウェアの利用が制限されている場合は、使い慣れたMicrosoft PowerPointやExcelを活用するのも一つの手です。多くのマーケティング支援企業が、PowerPointやExcel形式で編集可能なカスタマージャーニーマップのテンプレートを無料で配布しています。

これらのオフィスソフトを使用するメリットは、社内の誰もが閲覧・編集できる汎用性の高さにあります。特にExcelやGoogleスプレッドシートは、縦軸と横軸の項目を自由に追加・削除しやすく、情報の更新管理が容易です。まずは無料のテンプレートをダウンロードし、自社の項目に合わせてカスタマイズすることから始めてみるとよいでしょう。

5.3 自社に合ったツールの選び方

ツール選定で失敗しないためには、「誰が」「どのように」使うかを明確にすることが重要です。以下のポイントを基準に選ぶことをおすすめします。

  • 共同編集の必要性:チームで同時に書き込むならMiroなどのクラウド型ツールが必須です。
  • 学習コスト:多機能すぎると使いこなせない可能性があります。直感的に操作できるかを確認しましょう。
  • 出力形式:作成したマップを画像やPDFで書き出し、社内チャットや資料に貼り付けやすいかどうかも重要な視点です。

最初は無料プランやトライアル期間を利用して、チームメンバーと一緒に実際に操作感を試してから本格導入することをおすすめします。ツールはあくまで手段ですので、議論を活性化させ、顧客理解を深めるために最適な環境を選びましょう。

6. まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客の行動や感情を可視化し、チーム全体で共通認識を持つための強力なフレームワークです。ペルソナの設定から施策の洗い出しまで、5つのステップを丁寧に進めることで、顧客体験を向上させる具体的なアクションが見えてきます。

重要なのは、最初から完璧なマップを目指さないことです。顧客視点を忘れず、運用しながら仮説検証を繰り返してブラッシュアップしていくことが、成果を出すための近道となります。ぜひ本記事を参考に作成に取り組んでみてください。

著者: